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対話の中から立ち上がってきた、私たちの現在地。来期へつなぐ「旅と学び」の可能性

事務局旅と学びの協議会

今期、「旅と学びの協議会」では、多くの方と、さまざまな実践を重ねてきました。子どもたちの変容に立ち会った旅、日常の見え方が変わった気づき、思い通りにいかなかった企画、そして新たな出会いと、そこから立ち上がった企画…。
その一つひとつが、私たちにとっての「学び」であり、「次への問い」でもありました。本記事では、事務局と広報部メンバーそれぞれが感じた印象的な瞬間や、想定外から見えてきたこと、そして「旅とは何か」という問いに向き合った1年を振り返ります。対話の中から立ち上がってきた言葉の数々を通して、「旅と学び」の現在地を感じていただけたら嬉しいです。

《座談会に参加したメンバー》

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それぞれの「旅と学び」の瞬間

吉田:皆さんにとって、今期はどんな一年だったでしょうか。まずはそれぞれ心に残っている瞬間や、忘れられない場面など教えていただけますか。

松本:そうですね、色々あるのでひとつに絞るのは難しいのですが、確信したという意味で言うと、「撮り旅海外編」ですね。私は子どもたちに同行したので、事前準備から始まり、共に旅をして、最後の振り返り、動画を作って発表するところまで全て見てきました。
短い期間だったのですが、子どもの成長を目の当たりにできたことが心に残っていますし、自分にとっても印象深い体験でした。また、振り返りの際に、親御さんへのインタビューを実施したのですが、親御さんは現地には来ていないので、お子さんの様子や行動の変容をお話ししたら涙を流す方もいらっしゃいました。親御さんの感情と子どもの感情がものすごく動いているのが、この旅の中に凝縮されていたので、それぞれの変容はすごく大きかったなと感じています。

吉田:具体的に印象に残っているお子さんの変化ってありますか?

松本:例えば、計画の中で「ドナウ川を走りたい」という子がいて、私もその子と一緒に朝早く起きて、ドナウ川沿いを走って撮影しました。
その時のお子さんの表情がすごく良くて…。旅のなかで、自分の好きなことができるって、すごく幸せそうだなと思いましたし、国会を訪れた際も、最初は誰も質問しなかったのですが、1人の子が勇気を出して英語で質問したんですね。すると、それに触発されて「私も話したいんですけど、どうやって話せばいいですか?」という声が出てきて。「何でもいいから、日本語でもいいからトライしてみたら」と伝えると、そこからみんなが質問をし始めたんです。

吉田:いいですね。場の力と土地の力の相乗効果ですね。

松本:はい。特に初めての経験、異文化の中で感じたことは大きかったと思います。夏休みにイギリスでショートステイした中学生にもインタビューしましたが、感情が溢れていて「話したい」というエネルギーがすごく伝わってきて。私自身も学びになり、やってよかったなと思いました。

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日常の声かけが、子どもの行動をつくる

殿元:私は昨年の4月から事務局を担当していて、唯一参加できた旅が長野サミットでした。子どもを連れて参加し、現地の保育園で一緒に活動しました。自然豊かな場所で、泥遊びをしようという企画もあり、子どもだけでなく大人も一緒に泥の中で遊んで、五感を研ぎ澄ませるという体験でした。
当初、我が子たちは「きっと泥まみれになるだろうな」と思っていましたが、実際には最初は遊べませんでした。普段、私が「水たまりに入らないで」「泥で遊ばないで」と言っていたからか、「今日は洋服汚していいの?」と純粋に聞いてきて…。
そのときに、自分の日常の声かけが、子どもの体験機会や物事の捉え方、行動する意欲に影響しているんだと、はっと気づきました。これは「学びの旅」というコンセプトだからこそ気づけたことだと思っています。
家族旅行だったら、「汚れなくてよかった」と思っていたかもしれない。でも今回は、思いきり遊ぶ場が用意されている中で「できなかった」という経験があったからこそ、気づきに繋がりました。日常に持ち帰れる気づきがあったという意味で、すごく良い時間でしたね。

松本:マダニに噛まれましたね(笑)。

殿元:そうそう、次男がマダニに噛まれて(笑)。でも親も子どもも成長できて、本当に良い時間でした。

新しい人が混ざることで生まれる場

染谷:僕は下期から入会して、協議会に興味を持ってくれそうな人をどんどん紹介していたんですが、その象徴が元オリエンタルランドの豊田啓道さんのオープンカレッジのイベントでした。
外部の有識者や協力者、既存メンバー、新しい人が混ざって、「こういうことができるんだ」というのを同じ場で体験できたのはすごく良かったですね。短い期間ですが、この半年の集大成だったと思います。

吉田:私はツアーには参加できていないのですが、いろいろな方にインタビューする中で、自分の中の「旅と学びってこういうものだよね」という仮説が、どんどん確信に変わっていきました。
皆さんそれぞれ価値の捉え方は違うんですが、本質的には繋がっている。同じものを見ているなと感じました。例えば、小宮山理事長にインタビューした際の、「旅は遠くに行かなくてもいい、近所でも旅になる」という話はとても印象的で、自分の捉え方ひとつで、日常の中にも学びはあるんだと感じています。私にとっては、皆さんにインタビューさせていただいた時間そのものが楽しくて、大きな学びにつながりました。

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想定外から見えたこと

吉田:ここからは「想定外」というキーワードでお話ししたいのですが、事務局のお二人の中に結構あるのではないでしょうか。企画した時の狙いと、実際に世に出した時の反応。そのズレから見えてきた新しい発見についてなど、ぜひお聞かせください。

殿元:世に出して「反応が少ない状態」を見た時に、ズレを感じました。私たちが扱う「学び」は表現が難しくて、真面目な勉強というニュアンスではないのですが、伝え方によっては「研修旅行」のように受け取られてしまうこともあります。また、旅に対する目的やイメージも人それぞれ違うので、受け手がどう感じるかまで想像することの重要性を感じました。同時に、このような旅を求めている人がどこにいるのか、そのリサーチも大切だと実感しました。
来期は、価値を感じていただき、求めているお客様に届けられるよう、今期の学びを活かしていきたいと思います。

松本:集客という観点では、コンセプトは同じなのに「集まるもの」と「全く集まらないもの」の差があって、その違いが何なのかはすごく考えさせられました。場所や費用の問題であることもありますし、表現の仕方の問題もあると思っています。
私自身も「学びの旅をしたい」と思っていたタイプではないので、遊びの要素と学びの要素をどう取り入れるかはすごく重要だと感じています。実際に、小学1年生の子どもにチラシを見せると、「これは行きたくない」「これは行きたい」とはっきり言うんですよね。
何かを見て判断しているはずなので、その入り口にある「好き」や「楽しそう」という要素は不可欠だと思っています。学びを前面に出すのではなく、うまく“見えないように設計する”というのは、今後チャレンジしていきたいところです。

染谷:「気軽に参加できるかどうか」は大事なポイントだと思います。「きちんと学びに行かなきゃ」と思わせてしまうとハードルが上がってしまいます。その感覚をどう言語化するかは難しいですが、ヒントはあると思います。
例えば、子どもの感覚はすごく正直なので、「どこに興味を持ったのか」を聞いてみるのもいいですし、学生さんを対象に先にリサーチするのも一つの方法だと思います。世代によって刺さるポイントは違うので、そこを見ていくことは大事だと思います。

吉田:価格帯も含めて、ターゲティングはやっぱり重要ですよね。
どの層に届けたいのかを明確にして、必要であればマーケティングも含めて、もう少しデータドリブンに設計していくことも必要だと感じています。

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noteでの発信について

吉田:今年度からnoteでの発信を始めましたが、1年間続けてみて、変化やフィードバックがあればお聞きしたいです。

殿元:noteで発信していることで、外部の方に説明がしやすくなりましたし、私たちの思想的な部分も記事を通して伝えられるようになったと感じています。また、記事を作る過程で言葉や表現にこだわることで、自分自身の中でも協議会への思いが醸成されていきました。
今年度はインタビュー形式で何名かの方にご登場いただきましたが、まだまだ面白い活動をされている会員の方がたくさんいらっしゃるので、今後も発信していきたいです。

染谷:noteは「共感」が軸のメディアなので、必ずしも質が高い記事がバズるわけではなくて、個人のエッセイのような「分かる、共感できる」というものが伸びやすい傾向があります。また、SNSとして捉えるなら、親和性の高い団体をフォローして認知を広げることも一つの手段です。note主導のハッシュタグ企画に乗るのも効果的ですね。

吉田:活動をまとめて発信できていること自体が価値だと感じていますし、1人ひとりのストーリーや変容にスポットライトを当てられた1年だったと思います。今後はこれをどう活用していくかが課題ですね。

旅の再定義

吉田:活動を通じて、私たちは「旅」をどう再定義しようとしてきたのでしょうか。この1年で、皆さんの中で変化はありましたか?

染谷:自治体の仕事で同じ場所を何度も訪れますが、行くたびに違う景色が見えるんです。四季によって変わるし、その時にしか見られないものもある。「一度行ったら終わり」ではなくて、何度も行くことで新しい発見がある。それ自体が学びだと思っています。

吉田:私も再訪の価値をすごく感じていて、誰と行くかによっても体験の解像度が変わりますよね。特に、誰かと感動を分かち合うことで、その体験がより強く残ると感じています。

松本:旅も学びも非常に広い概念なので、すべてを定義するのは難しいですが、今期は「どこにフォーカスするか」を明確にすることを大切にしてきました。今後もアップデートし続けながら、私たちなりの定義を持っていきたいと思っています。

吉田:正解があるものではなく、「私たちの考える旅はこれです」と言葉にしていくことが大事ですよね。

今期の総括と、来期に向けて

染谷:僕は先ほどから巻き込みの話をしていますが、巻き込むときは気軽でよくて、巻き込まれたら全力で楽しむ、という気持ちが大切だと思っています。なんとなく関わるのが一番もったいない。入るのは気軽でいいし、共創できそうだと思ったら、ぜひ全力で関わってほしいです。
いろいろなバックボーンを持った人がいるので、コネクションやネットワークも広がっていく場所だと思いますし、全力でやることで見えてくるものもあると思います。

吉田:私は誤解を恐れずに言うと、仕事って友達を作るためにしているんです(笑)。これは私の師匠の言葉でもあるのですが、仕事って楽しいことばかりではないけれど、「この人とやりたい」「この人のためならできる」と思える関係の中で成り立つものだと思っています。
この協議会は、普段出会えない人たちに出会えて、普段経験できないことを経験できる場所です。ビジネスでありながら、それを超えたところでつながれる関係が生まれる。それは大人になってからなかなか得られない、とても価値のあることだと思っていますし、来期も、そのようなマインドで関わっていきたいと思っています。

殿元:今期、「旅はその人の人生やライフキャリアに大きな影響を与えるものになり得る」という話をしてきましたが、私自身まさにそう感じています。ここで出会う人や体験は、もう仕事の範疇を超えていて、自分の人生を形づくるピースになっています。仕事でありながら、仕事以上のもの。人生そのものに関わるような感覚です。
だからこそ、自分がどれだけ価値を感じているか、どれだけ熱狂できるかが大事だと思っていますし、その価値をもっと多くの人に届けていきたいと思っています。少しでも共感してくださる方と、来期はぜひご一緒できたら嬉しいです。

松本:共創プラットフォームとして、人が集まり、何かが生まれていく仕組みは引き続き作っていきたいと思っています。社会実装や研究、コミュニティづくりといった仕組みはしっかり整えつつ、同時に自分自身も楽しみ続けたい。やっぱり、楽しんでいる人のところに人は集まると思うので、その「楽しさ」も設計していきたいですね。
来年度は、若い世代にももっと関わってもらいたいと思っています。バックグラウンドに関係なく、興味を持ってくれる人たちが入ってきて、エネルギーが循環していくような場にしていきたい。熱狂や感動を大切にしながら、また1年、皆さんと一緒に進めていけたらと思っています。

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おわりに

それぞれの言葉から見えてきたのは、「旅と学び」が単なる体験ではなく、人の内面や関係性、そして人生そのものに影響を与えるものだということでした。
今年度、この協議会の中で生まれた数々の出会いや気づきは、きっと一人ひとりの中に持ち帰られ、日常の中で静かに、そして確実に広がっていくのだと思います。そしてその積み重ねが、次の旅へ、次の学びへとつながっていく。
来期もまた、新しい出会いと対話、そして想像を超える「化学反応」が生まれていくことを願って。引き続き、「旅と学び」の可能性を、皆さんとともに、これからも探求し続けていきたいと思います。

インタビュー・構成・執筆:吉田 麻美(THINK AND DIALOGUE) 
文責:殿元 綾花(ANA ホールディングス)、吉田 麻美

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