人とのつながりが旅を変えるー富良野ワーケーション記
はじめに
「ワーケーション」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
事をしながら旅をする
自然の中でパソコンを開く
あるいは、都会の喧騒から離れ、静寂を取り戻すといったイメージもあるかもしれません。
けれども「まなびの旅」という視点で考えると、それはもっと柔軟で、内なる自分とつながる時間なのかもしれません。
ふだんと違う場所で、ふだんと違う空気を吸い、
ふだん通りの仕事をしながら、ふだん気づかなかった自分に出会う。
今回ご紹介するのは、そんな旅の記録です。
北海道・富良野で過ごした、協議会事務局:齋藤のワーケーション体験。
そこには、日常から少し離れることで見えてくるものがあると実感する、
小さな「まなび」が詰まっていました。

日常から離れ、富良野へ
「なんとなく、日常から離れたい」
「自分のためだけの時間を持ちたい」
そんな気持ちを胸に、富良野へ向かった今回のワーケーション。
きっかけは「旅と学びの協議会」会員でもある松野健吾さんの存在でした。
松野さんは、富良野市職員として“旅と働き方の可能性”を積極的に発信し続けている方。
SNSでの発信やイベント企画を通じて、多くの人に「富良野という場所の魅力」を届けています。今回の滞在も、松野さんとのつながりがあったからこそ実現したものでした。
ホステルという“居場所”を選んだ理由
滞在拠点に選んだのは、富良野駅のすぐ近くにあるホステルトマール。
木のぬくもりが感じられる心地よい空間と、吹き抜けの開放感。
ここには、「ただ泊まる」のではなく「過ごす」ことを大切にした設計があります。
齋藤がこの場所を選んだ背景には、かつての旅の記憶がありました。
21歳の頃、サンフランシスコでの一人旅で宿泊したホステル。
世界中の旅人と語り合い、情報を交換し、知らない誰かの話にワクワクした夜。
「そうだ、あのときのような、“誰かとつながる旅”をもう一度やってみよう」
そんな思いから、今回はホテルではなくホステルという選択肢に。
実際に滞在してみると、思い思いに過ごす人たちの姿に、不思議な安心感を覚えました。
「みんなそれぞれ、自分の時間を生きている」ーそんな空気が心地よかったのです。

まちの人と、ゆるやかにつながる
滞在中は松野さんのご案内で、さまざまな富良野の場所を訪れました。
『NPO法人森のたね』では、自然と子どもたちが交差する温かい現場を見学。予定変更にも柔軟に対応しながら、「体験」を通じて子どもたちの好奇心を育む姿勢に感銘を受けました。
『富良野チーズ工房』では、観光客や地元の母たちが交わりながら、楽しげにチーズ作りを体験。市の施設としての歴史も垣間見えました。
『富良野自然塾』では、五感を使って自然を感じる体験や、環境問題への取り組みに触れ、体と心で「学ぶ」時間を実感。
『富良野演劇工場』では、倉本聰さんの想いが詰まった劇場を訪問。演劇を通じて地域とつながる取り組みに、表現の力と地域文化の可能性を感じました。
どの場所にも共通していたのは、“誰かの想い”が息づいていること。
そこに、松野さんのような“つなぎ手”がいてくれたからこそ、ただの視察ではなく、“心がうごくまなびの旅”になったのだと感じます。




朝、世界が動き出す音がした
ある朝、まだ街が朝靄にけむる静かな時間に、町を歩いてみました。
朝食に魚を焼くにおい、鳥のさえずり、通学する子どもたち。
街が、ゆっくり目を覚ましていく様子を感じながら、心が少しずつほぐれていく。
「この時間を大切にしたい」
そう思ったのは、久しぶりでした。

“まなびの旅”は、ふとした瞬間に立ち現れます。
ホステルのスタッフの所作や、「いってらっしゃい」と送り出してくれる言葉。
小さな出来事のひとつひとつが、あとからじわじわと効いてきます。
「環境を変えること」は、「自分の内側と向き合うこと」でもあります。
“まなびの旅”とは、知識を得ることではなく、気づきを持ち帰る旅。
日常では見落としていた大切なものが、ふと目の前に現れる。
それがこの旅で得た、いちばんのまなびだったのかもしれません。
どんな人に、この富良野の旅をすすめたいか?
・忙しさの中で、自分の“感覚”を取り戻したい人
・自然の中で、自分の時間を静かに味わいたい人
・ゆるやかな人とのつながりを、あらためて感じたい人
そんな人に、この富良野でのワーケーションを届けたい。
そして、松野さんのように、“旅のきっかけをつくってくれる人”がいるからこそ、このような「まなびの旅」は広がっていくのだと実感しています。
「まなびの旅」は、出会いからはじまる
富良野での旅が、ただのワーケーションで終わらなかったのは、この町に“人の手”が介在していたから。松野さんという存在が、「場所と人」「旅と学び」を結びつけてくれたからこそ、この旅は、参加した齋藤にとって特別なものになりました。
旅は、一人でもできる。けれどー
「まなびの旅」は、誰かと出会って初めて、はじまるものかもしれません。

