旅と学びの協議会シンポジウムVol.7
イベントレポート

「旅と学びの協議会シンポジウムVol.7」をドルトン東京学園中等部・高等部にて開催しました!第7弾のテーマは「人とのつながり」。このページでは、当日のイベントについてご紹介します!

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【更新日】
2023/4/25 撮り旅(株式会社AOI Pro.)
2023/5/18  研究部(日本アイビーエム株式会社)
2023/6/21 異文化交流プロジェクト(株式会社 電通 )
2023/6/22 アカデミック・ツーリズム(丸善雄松堂株式会社)
第1部

オープニング

オープニングでは、立命館アジア太平洋大学(APU)学長で本協議会理事の出口治明先生からご挨拶がありました。みなさまにはサプライズで、APUからご登場いただきました!

〜出口先生メッセージ〜

旅をすれば人と出会い、多彩な価値観に出会います。

コロナ禍を経験した僕たちが旅に出てどう変わったのか、旅人を迎える地域の取り組みがどう変わったか、そういう観点から今日は確かな問題意識を持って取り組みたいと思っています。

それでは、みなさん一緒に旅と学びの話を聞きましょう!

協議会が考える
「旅と学び」とは?

本協議会では、これからの時代を生き抜く力をつけるために「旅」での「学び」に可能性を感じ、賛同した会員の皆様と旅の価値や旅からの学びの可能性について考え、活動してきました。
その活動について、ANAホールディングスの松本よりご紹介します。
松本氏:ただいまご紹介に預かりました、ANAホールディングスの松本と申します。本日はよろしくお願いいたします。今日は初めて参加される方もいらっしゃると思いますので、皆さんと旅と学びについて楽しく考えて、交流して繋がりができたらと思っております!

まず本協議会の設立背景ですが、「知識習得型」の教育から21世紀型スキル「未来を切り開く力」を身につけていこう、ということから、日常(コンフォートゾーン)から飛び出して、アンコンフォートゾーンで21世紀型スキルを身につける経験が大切で、それには「旅」が最適なのではないかと考えています。

そこで、旅と学びに関する仮説検証を行って、これまで行われてこなかった検証に挑戦しようということになり、今3期の活動をしております。

■VUCAの時代を「楽しんで」旅と学びに関して学ぼう

コロナ禍で立ち上がったため、企画しても実施できなかったことがあり、今年度は58団体の会員の皆様とVUCAの時代を「楽しんで」旅と学びに関して学ぶ、という目標を立てて活動してきました。

1期2期から継続のプロジェクトや新たにプロジェクトが10ほど出きました。また少額ながら、協議会内でプロジェクト補助金を活用した活動もしました。

研究では、今年度は自ら旅をして仮説を立てて検証し、分析したものを論文にしたり、レポートにしました。
広報では、今年度初めて「旅と学びの協議会サミット」というリアルイベントを開催しました。これは、入会されている自治体や企業の関係性の深い地域に実際に旅して、旅のプログラムを作り効果検証をすること、会員同士の交流を目的としています。また「旅と学びカレッジ」という、オンラインでの勉強会も開催しました。
運営には、ANA以外のメンバーも入ってくださっています。
■旅から学ぶ、それを科学する。

我々がどのように旅を捉えるか、学びを捉えるかというのは、我々なりに考えていかなければならないということで、ディスカッションをスタートしています。これは最終版ではないもので、これからどんどんアップデートしていくものです。

この体系化に取り組むプロジェクトも立ち上がりましたので、ご関心のある方はぜひ一緒に活動できればと思います。

 旅には、旅前・旅中・旅後の3つのフェーズがあり、旅の要素としては図のようにいくつもあると考えています。旅の予定を立てたり、旅の後は振り返りをしたり、しない方がいらっしゃると思いますが、そういったことも旅での学びに繋がるかもしれません。

学びとしては、協議会が考えているものはこのようなものがあります。

・21世紀型スキル、ジェネリックスキル
・Well-being
・学びのプロセス(経験学習理論)
・五感で楽しむ、自分のものさし、価値観の変容

4期以降は、「五感で楽しむ」ということにも注力していきたいと考えています。

科学するという点では、旅とジェネリック・スキルに関する先行研究、前野先生のWell-being指標(幸せの4つの因子)、学ぶメカニズムなど用いて分析をしています。
今後は、「五感」をテーマに感動分析など客観的な指標やテクノロジーを用いたような分析方法など、新しい手法なども含めて洗い出しをしていきます。
■グループ旅行における人的交流がジェネリック・スキルに与える影響

2022年7月に、埼玉県飯能市にて「多様な文化」、本イベントのテーマである「人との繋がり」の要素を活用した旅のイベントを行いました。
特に参加者の「ジェネリック・スキル」がその旅でどうなったか、について鮫島先生にアドバイスをいただきながら、日本観光学会でも発表させていただいたので、その内容をかいつまんで発表します。

(この研究に関するプレスリリースはこちらからご覧いただけます)

旅における、人的交流が教育効果に何らかの効果があるということが分かってきていたので、「グループ旅行における人的交流の質(参加者同士の交流、地域住民との交流、参加者属性)」とジェネリックスキルの関係性を見てみました。

n数は少ないですが、参加者は12名。
観光地を巡ることやアクティビティがメインで、会員同士が楽しむ「観光コース」と、地域住民との交流を目的とした「地域交流コース」に分かれ、旅行をしました。

株式会社SHINKAの田中さん(本協議会 会員)の施設「ALIVE サステナブルラボ飯能」も使用させていただきました。
調査方法は質問表調査を用いて、参加者の「個人属性」「42個のジェネリックスキル(以下スキル)」、またn数が少ないため、テキストで「成長や改善位つながったと感じた理由」や「きっかけとなった経験と出来事」を回答いただきました。

分析手法としては、各コースのスキルの特徴、表出頻度が高いスキルに対する因子分析、KH Coderテキスト分析を用いました。
■コース別の成長スキルが明らかに!
両コースで共通しているスキルは、「認知や気づき」、「関係構築」、「いろんな方の中で気楽にありのままでいられる」でした。
また、それぞれのコースの特徴があり、改善されたスキルについての以下の回答がありました。

  • 観光コース:「調整」「寛容さ」
  • 地域交流コース:「効果的なコミュニケーション」「文化や言語の多様な環境における適用性」
テキストの分析結果は以下の通りです。
地域交流コース:「感じる」などの動詞や「コミュニケーション」「会話」「人」などの地域住民との人的交流に関する言葉の頻度が高く、会話から成長を感じる特徴が見られた

観光コース:「カヌー」「川遊び」などアクティビティや行動を表す名詞が頻度高いワードとして表出し、「調整」と「行動」の関係性の強度が現れたことから、経験に関わる感情の高ぶりと、参加者同士の意思決定に関わる調整が特徴


まとめとしては、以上のような全体的な特徴とコース別の特徴がわかりました。
地域交流コースでは、「効果的なコミュニケーション」「文化や言語の多様な環境における適用性」というところで、地域の人や一緒に旅をする方達と対話する中で違う価値観などを理解しようとしたり、地元の方に対しての会話の中で話し方を工夫されたりしていました。

観光コースでは、あらかじめ行く場所は決まっていましたが、グループ内のメンバーは初対面。行程の中でお互いの個性を理解しながらチームとして協調性を高めていった、一緒に行動するメンバーとの対話や行動に注力していた等のコメントがあり、そういったことから「寛容さ」「調整」が必要だったのかと思っております。

今後はさらにn数を増やして、調べていきたいと思っております。
まだまだ調べられていないことは沢山ありますので、ご興味のある方は是非お声がけください!
第二部

プロジェクト発表

本協議会では、会員が主体的にプロジェクトリーダーやメンバーとなり、会員である地域や学校、企業が連携した旅を用いた教育プログラムやリカレント教育の開発を行っています。
今年度の活動の中から、4つのプロジェクトをご紹介します。

地域の魅力を映像にしよう!撮り旅プロジェクト

鳥居氏:皆様こんにちは。初めまして。株式会社AOI Pro.の鳥居碧と申します。よろしくお願い致します。

弊社は、広告映像制作をコアビジネスとしている映像制作会社で、CM・映画・ドラマ・ミュージックビデオなどの映像を年間1000本ほど制作しております。
最近ですと、例えばグラミー賞 受賞歌手のエド・シーランさんとポケモンがコラボしたミュージックビデオですとか、ドラマ「Silent」も弊社が制作をいたしまして、かなり話題を呼びました。

そんな弊社が、2021年の末頃に旅と学びの協議会に入会いたしまして、旅と映像とを掛け合わせて何かできないかと立ち上げたのが、「撮り旅」プロジェクトです。
学生たちと旅をして、それぞれが感じたその地域の魅力を撮影・編集し、地域のPR映像としてアウトプットする、というプロジェクトです。
旅×映像でどういった教育効果があるのかを見てみたい、という想いもありましたし、近年YoutubeやSNSの流行により、若い世代にとって映像を撮って発信することが当たり前のことに
なってきています。若い世代の方々がただ撮影をして発信をするだけでなく、効果的な撮り方や発信の仕方を学ぶことで、学生たちが地域に愛着を持って地域の映像を発信してくれたら、それは地域活性化につながるのではないか、という想いを持ちながら、このプロジェクトを立ち上げました。
■撮り旅の3つの目的

目的としてあげたのは、3つです。
・若い世代のチカラと映像のチカラで地域創生に繋げる
私共のような映像制作会社が自治体の皆様からPR映像を発注いただくことは多々あり、プロですのでクオリティの高い映像を納品させていただくのですが、その1本を作って話題になったとしても、大体はそこで終わってしまいます。それも必要なことなのですが、それだけではなく、若い世代の方々にとって映像が身近な存在であるこの時代だからこそ、学生たちが映像のチカラで地域活性に繋げる、長く続くサイクルを作るということを目的として考えております。
 
・映像制作から得られる多くの学びを学生に提供し、成長をサポート
弊社は、このプロジェクトでの「映像制作」はツールであると考えています。はじめに企画をし、自分がPRしたいものをPRするにはどうしたらいいのか考え抜く力や、壁にぶつかった時に解決する力、アポイントを取る時のコミュニケーション能力等、学生の皆さんに社会で必要な多くの力を習得していただきたい、と思っています。
 
・学生に旅やクリエイティブの楽しさを感じてもらう
旅をすること、何かを創り出す「クリエイティブ」な作業の楽しさを皆さんに実感して欲しいと考えています。


■最短3日間で映像完成!撮り旅の流れ
まずは、旅の計画と企画の作業を行います。
地域のことをリサーチし、自分はその地域の何に魅力を感じるかを考え、テーマを決めて企画作りを行います。取材の許可取りなども学生が行うため、そこから地域との交流が生まれています。そして香盤と呼ばれる、行程表を作り準備を整えます。

そして、旅(撮影)当日はカメラだけでなく、ジンバルやドローンなどのプロが使う機材を使用して撮影をします。まずは旅自体を楽しんでもらうことや、地域の皆さんと交流をすることもかなり重視して行っていました。

最後に旅で撮った素材を編集して、制作した動画の試写会をし、発信していくという流れです。最短で3日間(企画・撮影・編集/配信を1日ずつ)で行っていました。学校によっては半年以上かけて実施したケースもあります。活動実績としては、参加した学生は総勢80名、作品はチームで作成したものもあり32作品が完成しました。
参加者が多かった松山大学さんを例に挙げて、ご紹介します。

昨年3月に松山大学さんでトライアルを実施し感触がよかったため、本始動として5月に説明会を実施。60名の学生が説明会に参加、その上で参加表明をした学生が40名いました。人数が多かったため、参加する学生に県内のどこへ行きたいかアンケートをとり、選ばれた5つの地域へ日程を分けて撮影に行きました。最終的に映像が完成したのは33名で、成果発表会にて作品を発表しました。その中でも、特に評価が高かった作品を皆さんにご覧いただければと思います。

撮り旅in松山 シネマティック三津浜(松山大学)

松山市の三津浜という港町を取り上げた作品です。地元の方に「三津浜はどんなところですか?」と聞くと「何もないところだよ」とおっしゃるのですが、若い世代からするとノスタルジックな雰囲気が「映える」とのことで、おしゃれなカフェやセルフ写真館などもあり、デートスポットや友達同士で遊ぶ場所になっているそうです。こちらは学生さんの目線だからこそできた作品だなと思っております。

■撮り旅で得られた「学び」のスキルとは
アンケートを実施しましたので、その結果をご報告させていただきます。
参加された80名中で回答者は64名だったのですが、5つの質問に答えてもらいました。

設問①成長した・改善したと思うスキルは?
一番多かったのは「創造性」でした。2番目に多かったのは、「効果的なコミュニケーション」「問題解決力」。そして3番目に「目標達成のための計画性」「学ぶ意思や能力、学び続ける能力」「関係構築・維持」などが挙げられました。
地域を盛り上げるための映像を制作するということだけでなく、地域の方々と交流・取材をしてその想いを感じながら撮影したことが、効果的な21世紀スキルの習得につながったのではないかと考えております。

設問②撮り旅を通して、旅をした街を好きになりましたか?
設問③撮り旅を通して、旅をした街の魅力を発見できましたか?
答えに関しては、9割以上の学生が街を好きになった、街の新たな魅力を発見できたと回答がありました。
設問④また映像を作りたいと思いますか?については、編者の自作自演にも見えますが(笑)100%が「そう思う」と好評の声を頂きました。
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設問⑤今回の撮り旅の感想や良かった点、改善して欲しい点などがあれば教えてください。

こちらは、回答からいくつか抜粋したものです。
​​・元から映像に興味があった人もそうでない人にとっても凄く意味のあるプロジェクトだと思いました。(18歳 男性)

・撮影させていただいた施設の方々と関わることで地域活性化とはどの様な達成感があるのか学ぶことができ、本当に参加してよかったと思うことができました。ありがとうございました。(20歳 女性)

・動画撮影や制作という単純なスキルだけでなく、人との繋がりやチームワーク、そして一人一人の意見を聞き合い尊重するといったような、人との関わりの大切さや繋がりを強く感じることができたプロジェクトだったと感じました。(21歳 女性)

・この撮り旅を通して動画撮影編集だけでなく、地域活性化や多くの課題解決に取り組むことが出来てよかったです。とても楽しく良い経験になりました。(19歳 女性)

■2023年度も各地で実施・拡大を予定しています
当初掲げていた三つの目的は達成できたのかなと思っております。
皆様からも好評で、ありがたいことに、全ての実施した自治体・学校教育機関の皆様から今年も実施させてください!とお声をいただいております。また、新規のご依頼もいただいておりますので、さらに拡大していきたいなと思っております。
もしご興味がある方がいらっしゃいましたら、お気軽にお声がけいただけますと幸いです!
撮り旅 公式Youtubeチャンネル
今日お見せした映像以外にも、魅力的な映像がありますので、ぜひフォローしていただけると嬉しいです。

撮り旅 〜 produced by AOI Pro. 〜
ご静聴いただきありがとうございました。

Q&A & Comments

Q. 参加者:学生さん達を客観的に見て成長したな、と思ったことはありますか?

A. 鳥居氏:80名の学生さんに参加していただいて、いろんな成長が見られました。
特に高校生が参加した撮り旅にて、アポ取りをする際に緊張していらっしゃる様子だったのですが、何回かアポ取りと取材を繰り返していくうちに自信がついて、自らお店に「昨日電話した○○です!!」と自信を持って行っている姿をみて、小さな社会とのつながりが成長に繋がるんだなと思いました。
ドルトンの生徒も、さまざまな動画を作ったりするような場面は結構あって、一人ではなくチームで作るということに教育的な意義があるし、生徒の成長も感じています。
専門家が生徒の作品に手を入れすぎずに、生徒の「自分なりの表現」との両立が肝であると思います。
あとはYoutubeチャンネルでの発信だけでなく、イベント的な盛り上がりがあると面白いのではと思いました。
ドルトン東京学園 中等部・高等部
安居長敏 校長
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サンプル 太郎

異文化交流プロジェクト

皆様こんにちは。よろしくお願いいたします。電通の安孫子と申します。

今年の2月に実施させて頂いたプロジェクトのご報告をさせて頂きます。

昨年は2021年9月に、まだコロナ禍ということもあって、リモートでしか実施出来なかったんですけれども、今年はなんとかAPUの留学生に東京に来て頂いた上で、鎌倉学園さん、かえつ有明さんとリアルで実施することが出来ました。

今回プロジェクトを実施するにあたり、ご支援頂いた事務局や学校関係者の皆様に、まずありがとうございました、という所で私の方からご報告させて頂きます。

■前回プロジェクトの振り返り(2021年9月 リモート実施)

2021年9月は、各学校で実施されている授業の延長線のような事をAPUの留学生に参加頂きリモートで実施しました。

留学生から見た文化的に異なる部分の意見を聞き、かえつ有明さん・鎌倉学園さんの(生徒さん)気づきにして頂くという事をした次第です。

(2021年9月 アンケート結果)

・色んな人との交流で学びもしくは気付きがあったか? 100%「Yes」
・リアルに会えると学びが多くなりそうか? 100%「Yes」
・今回はリモートでしたが、楽しめましたか? 95.5%「Yes」 0.5%「No」
という前回プロジェクトに対するアンケート回答を踏まえ、是非2022年度はリアル開催出来ると良いなという思いから、今回のプロジェクト実施の運びとなりました。

■今年度の 異文化交流 旅からの「学び」を効果検証 Feb18 and 20

・DAY1では、APUの留学生2名(リベリア出身・ベトナム出身)に東京に来て頂き、
それぞれの出身国の紹介を聞いたあとに、「日本を世界の人に知ってもらい、世界からビジターを増やすために私たちが出来ることを考えよう!」をテーマに学生同士で1日議論しました。

・DAY2では、ANAさんにお伺いして、ディスカッションした内容を発表・報告しました。(※移動時間の都合上、鎌倉学園さんはリモートでの参加)

ここ最近はコロナでなかなか海外に行くことも出来ず、海外への修学旅行も実施出来なかったという事から、世界に目を向ける機会が希薄しているという事を踏まえ、冒頭、様々な国から留学生を受け入れている学校という特色があるAPUさんならではの視点で、今の日本の状況を説明して頂くといった事もありました。

特に、日本は便利で安全で快適な国ですけれども、他の国は陸続きで他国と隣接していたりと、日本に住んでいては分からない事も多いので、そのような点も含めて、APUさんから最初にお話がありました。

日本は安全な国といいますけれども、実は世界から見ると「特殊」な国という言い方をAPUさんがされていたり、世界を知る為にはやはり、交流・対話が近道であるといったことも仰っていました。

向かって左側の写真ですが、数字が「6」か「9」か、正解はどちらでも良いのではというところで。

相手の事を、多様性を受け入れるという事が今後、世界と向き合っていくうえで大事だと思いますし、日本の当たり前が世界に通じるとは限らない、といったお話が非常に印象的であるなと感じました。

■留学生の出身国についてのご紹介

お2人の留学生からそれぞれの国について紹介して頂きました。

ベトナムご出身 グィン ゴク トゥイ ヴィさん

「ベトナムには何民族がいるか?」といったお話で、答えがどれかというよりもベトナムに50以上の民族がいることに驚きましたし、日本で生活していると「民族」という単語自体、馴染みがないので、生徒たちも新鮮な気持ちで聞いていたのではないかと思います。

リベリアご出身 ドルカス ケー メンディンさん

伝統的なダンスについてや、リベリアは意外とビーチリゾートであるといった話、アフリカの中で植民地になっていない国の1つであるということ、リベリアで現在問題になっている点についてお話いただきました。

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■グループに分かれてディスカッション

テーマ:「日本を世界の人に知ってもらい、世界からビジターを増やすために私たちが出来ること。を考えよう!」

学生たちならではの視点があるなと改めて感じました。

・自分と違う国の文化を理解することが第一歩
⇒留学生の二人が言っていたのは、「敬語」という日本の文化をよく理解できていないということ
SNSとかで得た他国の情報よりも、リアルに対話して得た情報の方が理解に繋がるという話もしていました。

・交換留学×社会人
⇒社会人版の交換留学という発想が非常に面白いなと聞いていました。

・英語力の習得、ビジネスの関係人口の需要創出
⇒シンガポールへのビジネス需要が高く、観光客もそれなりに多いという話のインプットがAPUさんから事前にあった事もあり、その点について深掘りして話し合っていました。

・学習プログラムの再考
⇒日本だと理系・文系とクラス分けがされていたり、受験の際にも分かれていますが、
 ベトナムやリベリアは文系も理系も分けずにマルチに教育が進んでいくという事があり、
 その点について議論がありました。

■生徒たちの声
Qいろんな人との交流(他の学生、APUの学生)から学び、もしくは気づきはありましたか?
100%「Yes」(以下、一部抜粋)

・自分がまだ気付かなかったことを知れた。
・まだまだ世界について自分は無知だっていうことがわかった。
・自分じゃ絶対思いつかないような発想が次々と飛び交っていたので人との交流って
 すごく大事だなと思いました。
・鎌倉学園の人達もすごくいい人で、面白い考えを持っていた。そして卒業生の方たちからも色々学ぶことがあった。
 リベリアとベトナムからのAPU生からは色々な英語の訛りを聞けたのが面白かったし、
 向こうのことも知れて面白かった。
・It was impressive that students were really proactive in brainstorming the questions as well as speaking up their ideas/opinions in front of the class. They weren’t shy in front of me or Dorcas, and they really opened up.

Q.今回のセッションは楽しかったですか? 100%「Yes」(以下、一部抜粋)

・他国の人とコミュニケーション力も英語力も上がった気がしてすごく楽しかった。
・違う国、違う学校にいる方たちの意見を沢山聞けて、視野が広がり勉強になりました。
・Both Saturday and Monday were so much fun for me.On Saturday, I enjoyed interacting with and learning from the students. They were all so outspoken and the workshops they planned were fun.
I really appreciated that they were curious about us and made efforts to ask us questions about ourselves. It was also great that they took us to lunch and introduced their favorite shops in the food court.

■そのほかにも・・・

■まとめ

事前に他校の生徒や留学生と交流をしたうえで、あるテーマに則ってディスカッションをすることで、色んな発見がありましたし、「旅」が加わるとさらに化学反応があるのではと感じました。

高校生、学生の発想は無限大だとすごく感じたので、そこを僕たちがしっかり拾っていく必要があるなと思いました。

僕も含めてですけれど、英語力は引き続き日本人が向上していかなければいけないですし、訪日客や関係者人口、ビジネスで日本に来ていただく場をしっかり作っていく必要があるのかなという所をこのプロジェクトで感じた次第です。

旅と学びの関係性解明にこのプロジェクトは寄与しているのではないかと思っております。以上でございます。ありがとうございました。

Comments

小宮山利恵子 氏

旅と学びの協議会 理事
東京学藝大学大学院准教授 スタディサプリAI研究所所長


素敵な取り組みをご紹介頂きましてありがとうございました。
まず、リベリアって私自身が知らなかったので、どこにあるのか確かめたのですが、西アフリカにあるのですね。学生さんも知らない方が多かったのではないかなと思うので、興味の1つになるのではないかなと思いました。

素晴らしい点が沢山あったのですが、「自分たちの常識は、非常識だ」ということを知る機会が殆ど無いので、このような機会を通じて、自分たちが考えている事や、普段ふつうにやっていることが他国にも通じるのかっていうのを考えるきっかけになったのが良かったと思います。

はてなマークが頭の中にどれだけうかぶかなんですよね。リベリアの方とお話すると、多分相当いろんな疑問が浮かぶかと思うのですが、それが興味となって、もっと聞きたいという事につながるかと思いました。

ディスカッションの内容が出ていましたけれども、私たち大人だけでは思いつかないような視点の意見が出てきていて。社会人の交換留学とか凄く面白いと思います。

五感を使ったアクティビティという観点だと、リベリアの料理を食べることが出来たりすると凄く記憶に残ると思います。次回からその国の食事を1品だけでも楽しむことが出来たら良いなと思います。

参加者から

こういったお話を聞くことが出来るのは高校生にとって非常に刺激的な経験ではないかと思いました。

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VOICE

アカデミック・ツーリズム プロジェクト

岩田氏:皆さんこんにちは。初めまして。丸善雄松堂株式会社の岩田千穂と申します。この度は、発表の機会をいただきありがとうございます。

昨年末から年始にかけて、研究部から「アカデミック・ツーリズム」プロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトは、合同会社ビーコンつしま、丸善雄松堂株式会社、ANAホールディングス株式会社事務局がプロジェクトメンバーとして活動しております。

ビーコンつしまさんは、長崎県対馬市(「国境の島・対馬」)で旅行企画、ツアーガイドをされています。対馬は日本の最前線に位置するからこそ、類い稀な歴史の積み重ねがあり、その面白さを多くの方に知って欲しいと事業をされていらっしゃいます。このプロジェクトでは、プロジェクトリーダーをしてくださっています。

私が所属する丸善雄松堂は、大学をはじめとする全国の教育・研究機関への学術資料の提供や学習空間・商空間のプロデュース、図書館など教育機関・文化施設の運営支援等の事業をおこなっております。地域や社会に広がる「まなびのつながり」を育み、人びとの持続的なまなびを促進する環境づくりを支援したいという想いで事業を展開しております。

本日はまず、アカデミック・ツーリズムプロジェクトとは何かご紹介させていただいた後、実証実験として行いました対馬でのモニターツアーの様子や検証結果の一部をご報告したうえで、今後の展望をお話させていただきます。

■アカデミック・ツーリズムプロジェクトとは

では、早速どんなプロジェクトなのかご紹介したいと思います。アカデミック・ツーリズムプロジェクトは、先ほども触れました通り、本協議会の研究部から立ち上がったプロジェクトです。

アカデミック・ツーリズムは、一般的には大学のゼミ旅行や大学が主催するフィールドワーク型ツアーなどを指すことがありますが、このプロジェクトでは「研究者や専門家の学術的な解説・ガイドを聞き、直接質問し、対話する機会のある旅行」としています。ここでの研究者や専門家は、大学や研究所、博物館をはじめとする社会教育施設等に所属しています。

ここで、現在の旅行においてどれくらい社会教育施設が活用されているかを見てみますと、例えば

観光戦略実行推進会議の資料(文化庁, 2019)によると、訪日客の29%が美術館・博物館を訪問、26%が日本の歴史・伝統文化を体験(複数回答調査)。海外でも博物館等の文化資源は観光振興に極めて大きな役割を占めているといわれています。

しかしながら、国内旅行者はどうかと目を向けると、旅行中の訪問先として、社会教育施設(博物館、科学館、図書館、公民館、体育施設など)はあまり一般的ではないという現状があります。

公益財団法人日本交通公社(JTBF)が行った 旅行者意識調査(五木田ほか, 2020)によると、「新型コロナ収束後、旅行先で行いたい活動」として「歴史・文化的な名所の訪問」を選んだ人は全体の8%ですが、美術館や博物館を選んだ人はわずか0.9%にとどまります。

出典:
文化庁. (2019). 「観光戦略実行推進会議(第35回)参考資料1」. 首相官邸ホームページ. https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kanko_kaigi_dai35/sankou1.pdf (参照:2023-03-24)
五木田ほか. (2020).「新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その5)~JTBF旅行意識調査結果より~」. 公益財団法人日本交通公社. https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2020/08/covid-19-japanese-tourists-5_JTBF20200814.pdf(参照:2023-03-24)

■専門家や研究者の対極にある「初学者」に着目

今ご紹介したような、社会教育施設の旅行における利用率の低さは、そういった施設の利用に対する心理的ハードルが高いのではないか、という考えが研究部での議論内で出たことからも現実感があります。

そういった背景から、本プロジェクトでは、「専門家」や「研究者」の対極にある「初学者」に注目しました。アカデミックでディープなツアーに参加し、研究者や専門家の話を聞くことで、初学者の好奇心や学びにポジティブな影響があるのではないか、と仮説を立てました。一方で、受け入れ側となる専門家は、普段交流する機会の少ない初学者の興味・関心を知ることで、専門家同士の会話だけでなく、自身の専門知識をより広く伝える方法を考えることができるのではないかと考えました。

このように、参加者・受け入れ側双方に相乗効果があるという仮説を立て、本プロジェクトの目的を、大きく2つ設定しました。ひとつは、アカデミックなプログラムやツアーの提供により初学者の好奇心を高め、学びを深め、結果的に同地域の再訪につなげること、もうひとつは、受け入れ側となる専門家がプログラムやツアーを通して初学者の興味・関心を認識し、地域の再発見につなげ、題材の検討や伝え方に活かすことです。

上記の仮説を検証するために、実際にアカデミックでディープなツアーを対馬で企画し、参加者と受け入れ側双方へアンケートやヒアリング調査を実施いたしました。

■対馬でのモニターツアーを実施 

具体的には、対馬博物館、長崎県対馬歴史研究センター、環境省対馬野生生物保護センター等で専門家のお話をお聞きし、また、対馬の様々な場所を、ビーコンつしまの佐藤さんに詳しくガイドいただきながら訪れる2泊3日の行程でした。
専門家の方々からは、江戸時代に朝鮮国との外交・貿易実務を担当していた対馬藩宗家の記録類であり、国の重要文化財に指定されている「宗家文書」について、2022年に開館した新しい対馬博物館の展示手法や展示物について、対馬野生生物保護センターの活動について、日露戦争末期に対馬沖で繰り広げられた海戦とその際に撃沈したロシアの船から脱出して流れ着いたロシア兵を対馬の住民が助けた逸話などをお聞きしました。そのほか、佐藤さんにガイドしていただきながら写真のように対馬の様々な要所を訪れました。

写真をご覧いただいただけでもお分かりになるように、かなり盛りだくさんな旅程を終えたあと、全12名の参加者にアンケートに答えていただきました。

■初学者の更なる好奇心に迫る

今回のツアーでは、対馬の北から南まで様々な場所を訪れましたが、訪れなかった場所も含めてさらに知りたいと思った内容をお聞きしました。とくに多く選択されている項目は、専門家の方にお話を聞いた場所(対馬歴史研究センター、対馬博物館、環境省対馬野生生物保護センター、日露友好の丘など)と、観光地として感動してさらに知りたいと思った場所(浅茅湾、対州馬、和多都美神社など)の2パターンがあるように読み取れます。

■地域に対しての想いを参加者に聞いてみました
次に、地域への愛着度をはかるために、地域に対して感じていることを伺いました。

「この地域のことをいろんな人に知ってほしい」「この地域の歴史や文化を誇りに思う」「この地域の良いところを残していきたい」「かけがえのない地域だ」といったことを感じた方が多いという結果になりました。

この質問に対して、「なぜそのように感じたか」ということを自由記述で回答いただいたので見てみたいと思います。

・国防の要所である歴史をたくさん聞いて、特殊な場所が織りなす文化を残したいと思う。観光に対する意識に問題がありそうなので、関わりがいがありそうだと感じた。

・博物館で学芸員の方のお話を聞き、展示物を鑑賞することで、亀卜や偽印の内容に興味を持ち、日朝交流の歴史についてもっと知りたいと思った。
 
・対馬の位置や地形を主な要因とした自然的、歴史的、文化的特徴を、専門家のお話を聞きながら、また、島内各地を見て感じました。

・対馬博物館でのお話を通して、対馬には宗家など特有の歴史があることを知り、また書物などの丁寧で時間を要する細かい修復や保管されている活動から、良いところは残し後世に語り継いでいくことは大事だと思いました

・屋久島の固有種や西表島のイリオモテヤマネコは有名ですが、ツシマヤマネコをはじめとした固有の動物たちについて、保護センターでのお話から初めてお伺いすることばかりで興味が湧き、いろんな人に知って欲しいと思いました。

「聞いて」「お話を聞き」「○○でのお話」といった言葉が添えられたコメントが多く、専門家にお会いしてお話を聞いたことが強く印象に残り、対馬に対して感じたことに少なからず影響を与えていると推察されます。

■他の地域でもアカデミック・ツーリズムを利用したい!

今後の旅行の際の選択肢として、他の地域でアカデミック・ツーリズムを利用したいかという質問に対しては、利用したいと強く思っている方が6名、残りのほとんどの方もどちらかといえば利用したいと思った方が多かったです。

■ 最後には対馬クイズを実施! 

最後に、ツアーの中でお話がでた事柄がどれくらい印象・記憶に残っているかを確認するために、対馬クイズを出してみました。これは、検証方法としては新しい試みでしたが、ツアーのなかで専門家やガイドから聞いたお話を中心に4問出題し、正解率75パーセントでした。

これを高いと見るか、低いと見るかは要検討ですが、少なくとも、ツアーに参加しなければ答えられない質問ばかりでした。

以上が、ツアー参加者へのアンケートから見えたことのご紹介でした。

■受入側の反応は?
続いて、ツアーで参加者へ専門的な知見からお話しいただいた方々へのヒアリング結果から、プロジェクトが仮説として考えておりました「受け入れ側(専門家)は、普段交流する機会の少ない初学者の興味・関心を知ることで、地域の再発見や、自身の専門知識をより広く伝える方法を身に着けることができる。」にかかわる部分をご紹介いたします。

初学者の興味・関心の認識について:興味をもって説明をきちんと聞く様子や理解してもらっている雰囲気、積極的に質問する様子や、顔・身体を話者のほうへ向けて聞く様子などをご覧いただき、今回の参加者が非常に興味・関心があることがしっかり伝わっていました。

地域の再発見:対馬野生生物保護センターは、これまで島内の方をメインターゲットとされていたようですが、今回の受け入れが島外の方への情報発信のテストケースとなったとおっしゃっていました。

題材の検討や伝え方について:島外の方への対応についてその効果が見えていないためこれから検討するといった声や、受け入れ後のフィードバックをもとに次の展示の工夫につなげたいという声、来訪する方がどういった方か(興味がどれくらいあるか)が事前にわかっていると対応しやすい、といった声がありました。

■受入側ヒアリング結果

受入側の方々へのヒアリング結果をまとめますと、各施設とも扱っているテーマに興味を持つ人を増やしたいというニーズがあり、それに対して今回の参加者は皆説明を熱心に聞いてくれたので、意義が見いだせるというポジティブな反応をいただけたと言えます。今回のツアーに関しては、事前に協議会の趣旨をご説明しておりますので、好奇心が強い方がいらっしゃったという認識もあったかと思います。

一方で、課題として見えてきたことは、同様のツアーの評価方法や継続性、マンパワー不足の問題でした。これらを克服するためのアイディアとして、観光ガイドなどを担う地域住民へレクチャーすることで説明する人を増やすことがあり、各施設前向きにとらえています。初学者に近い目線で話せる人を増やし、施設の活動にかかわる市民(地域住民)を増やす効果も期待できます。

■今後の展望

アカデミック・ツーリズムプロジェクトのご紹介、モニターツアーの様子と検証結果の一部のご紹介をさせていただきました。まだ立ち上がって数か月のチームですので、今後は引き続き検証を続けていきたいと考えております。

また分析や研究のためにはサンプル数も増やしていきたいと思っております。新しいプログラムやツアーを組んで、参加者の数を増やして行けたらと考えております。以上で私からの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

Comments

鮫島卓 氏

駒沢女子大学観光文化学類 教授
旅人(世界75カ国)

今回のシンポジウムの大きなテーマ「人と人の繋がり」と照らして考えると、アカデミック・ツーリズムの本質は、「専門家のガイドの重要性」ということかなと理解しました。

一つ非常に面白い本があってご紹介したいのは、巽好幸『「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係』(光文社新書)です。本屋でたまたま手に取った本で、この本の主旨は「和食が美味しい理由を地質学的に説明する」というものです。つまり、食材の成り立ちというのを地質や水質、地形などから紐解くという内容です。よほどのインパクトのあるものを除けば、地域の観光資源の多くはパッと見だだけではその価値はわからないものが多い。その深層にある地質、地形、歴史、文化、生態系、自然環境などの「地域の価値」を専門家の意見を通じて引き出して、旅行者と仲介して繋げていくということだと思います。

例を挙げると、ワインの世界ではテロワールという言葉がある。テロワールとは、生産物に影響する地位の個性のことです。ブランド化されたワインは、そういった「そこにしかないこと」が環境価値や文化価値に変わり、付加価値が加わっているという特徴があります。しかし、地域の個性は見えにくいので、表に出して「見える化」することによって、より地域の個性が光り輝くように磨くのが、観光の役割であり、専門家のガイドの重要性ということだろうと思いました。

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第三部

旅と学びの協議会 研究部
活動内容と活動成果

上甲氏:こんにちは。日本アイ・ビー・エム株式会社の上甲と申します。よろしくお願いいたします。

私から研究部の活動と、その成果の一つであるプロジェクトのご紹介をさせていただきます。 

■研究部の活動

研究部の活動としては、これまでこのシンポジウムでもお話していたように、旅と学びを科学するというところをやっております。

「旅」と言っても色々あるし「学び」にも色々ある中で、研究部では、各自が関心のあるテーマを持ち寄って議論を行い、同じ関心を持つメンバーでプロジェクトを立ち上げるような形で活動しております。

テーマの例としては、「サイクルツーリズム」や「アカデミックツーリズム」をはじめ、もう少し抽象的なテーマですと、「同じ場所に繰り返し行く意義って何だろう?」ですとか、「計画を敢えて立てない意義って何だろう?」「旅と学びを体系化しよう!」など、具体的なものから抽象的なテーマのものまで、各自の興味のままに活動をしております。

本日は「短期海外留学プログラムにおけるグループでの学び、人と人との繋がりと学び」というテーマで、APUさんと一緒にプロジェクトを進めましたのでご紹介します。

APUの筒井先生、チョン先生、カッティング先生という方々と一緒に進めておりました。

■背景・目的
<短期海外留学の現状>
 
短期海外留学のご経験がある方も多いかと思います。
大学の授業のカリキュラムという事を考えると、いかに教育の質を担保してるかという部分が大事になってきます。
では、どうやって教育の質を担保するのかというと、プログラムに行く「前」と「後」が大事だろうと。
 
・プログラムに行く前⇒学習理論に基づくプログラム開発
学習理論というのは、人が一体どのように学んで、学んだ知識をどのように活かしていくかという理論なんですけれども。
「経験学習理論(Kolb)」というのがあって、学びを得るには具体的経験が必要である。
更には、具体的経験に基づいた振り返り・内省が必要である。
それを踏まえて新しいことに適用していく、というサイクル・経験学習理論に基づいたプログラムを作るということ。
経験学習理論に基づいたプログラムというのは、プログラムの中に何かしら仕掛けを作る、敢えて振り返りの時間を作ったり、現地の人との交流が生まれるような経験を作るとか、そのような仕掛けがポイントになってきます。
 
・プログラムに行った後⇒教育的成果の検証
経験学習理論に基づいたプログラム、そういった教育的仕掛けが、
いったい人の学びのプロセスにどう影響を与えて、どのような成果があったのかというのを検証していきます。
<学習理論に基づく短期海外留学プログラムの例>
具体的な例として、APUさんの「FIRST」(短期海外留学プログラム)をご紹介します。
FIRSTは、APUの学生が国内外に赴きそこで初めて出会う人々と交流をするといったもので、
大体1週間弱くらいの期間をグループで活動します。
まさしく経験学習理論ですとか、不確実性・不安調整理論に基づいた様々な仕掛けを施したプログラムです。
<課題>

留学プログラムの効果の検証が難しいのが課題です。
何故かと言いますと、留学プログラムの内容が多岐に渡っていて、渡航先が違えば教育的仕掛けも異なりますし、そこで何をするかも違うと。
学びの成果という観点でも、同じ経験をしたとしても、ある生徒には効果があっても他の生徒には効果が無いという事があったり。
表現の仕方にも個人差があります。
同じグループで同じ体験をしたとしても、それに対してどう感じたかなど、レポートでの表現がまったく違うというところで、検証が非常に難しい。
グループの学びという事になると、人と人との相互作用が出てくるのでもっと難しいですし実際、「留学プログラムにおけるグループの学び」に特化した研究って殆ど無いんです。
■データおよび分析方法
FIRTSTプログラムの振り返りのレポートを対象に分析をしてみました。
約240くらいのレポート数で、
  • 何故FIRTSTプログラムに参加したのか
  • 何を目標にしていたのか
  • 具体的にどういう経験があったのか
  • 何を学ぶことができたのか
等、いわゆるレポートの形で皆さんが書いたものを対象にしました。
どのように教育的仕掛けや学びの関係を見ていくかについては、
闇雲にレポートを見ていっても分からないので、
テキストマイニングという手法を用いて学びに関するキーワードを見つけ、そのキーワードに基づいて教育的仕掛けと学びの関係を考察するといったアプローチ方法で実施しました。

着目すべきキーワードと言っても、どのグループでも同じように使われている言葉に関しては、些細であまり意味がないということで。
あるグループではよく使われているが、
あるグループではそうでもない(使われていない)言葉
については、そのグループにとって印象的であったり学びに繋がっているのではという仮説を立てて、着目すべきキーワードというのを考えてみました。

■分析結果

では、着目すべきキーワードは何を選んだかと言いますと、グループの学びに着目して「任せる」という言葉を抽出しました。

「任せる」という言葉がレポートの中で具体的にどのように使用されているかというと、
現地の人(韓国人)とのコミュニケーションを、グループの中で韓国語ができるメンバーに「任せる」という使われ方が多く出てきました。

では、その「任せた」経験がどのような学びに繋がったかと言いますと、グループで協力して取り組むことの大切さが分かったという感じで、プログラム終了後の内省・振り返りを通じて、自分なりの学びを得たという事です。

学び方も色々で、旅の中でも振り返りがあるので、旅の最中に気づくといった事もありました。

(レポートの例② 青字下線部分)

【気づき】

  • 初日は、班員に韓国語が大半話せる友達がいたので、任せっきりにしてしまい、
  • 今日を振り返ってみて、このままだと何も学習しないまま5日間が終わってしまう

                 ↓  

【学び】           

  • 韓国語が話せる人にどのように話せばいいか聞いて、教えてもらおう

<参考>

参考までに、「任せる」というキーワードは結構重要で、教育分野では'フリーライダー'という課題があるのですが、今回レポートの中からキーワードとして「任せる」という課題を象徴するような言葉が浮かび上がってきたのは結構興味深いことだなと思います。

教育的仕掛けと学びの関係性なのですが、

先程のレポートに戻って、「現地の人との交流を任せきりにしてしまった」という文章の前部分を更によく読んでみると、

これら(青字下線部分)は、具体的な経験の振り返りを通じた学びであり、教育的仕掛けによって生まれた学びなのではないかなと思います。

いまは一つのサンプル(レポート)を見てきたのですが、
「任せる」という意図を含むレポートは他にももっとたくさんありました。
他のレポートに関しても、段階ごと(事前授業・海外留学・事後授業)に追って見てみました。
そうすると、理論ではなくて旅の実践の中で教育的仕掛けがどのように学びのプロセスに繋がっているのかが少し見えてきました。
 
例えば、
(d)韓国語の習熟度調整
(f)移動型実習
(g)現地の人へのアンケート調査
⇒アカデミックな「経験する」といった学びのプロセスに繋がっていますし

更に「経験」したあとの「振り返り」という学びのプロセスでは、
(a)ルーブリックによる目標設定
(b)毎晩の振り返りセッション
が関係しています。

更に「自分で試す」といったところでは、
(a)ルーブリックによる目標設定
(g)現地の人へのアンケート調査
先程のレポートでいう、「初日には、韓国語を話せる班員に任せてしまって出来なかった」
という気づきによって、翌日以降への「自分で試す」という機会に繋がっています。
(a)ルーブリックによる目標設定
(c)事後の振り返り議論・レポート

という教育的仕掛けによって「メタ的に振り返る」という学びのプロセスに繋がっています。

今回は、短期海外留学プログラムを例に分析を進めました。今後も、こういった形で、旅と学びの関係性を丁寧に紐解いていくことで、どんどん新しい気づきを見出していければと思います。 

ありがとうございました。