〜出口先生メッセージ〜
旅をすれば人と出会い、多彩な価値観に出会います。
コロナ禍を経験した僕たちが旅に出てどう変わったのか、旅人を迎える地域の取り組みがどう変わったか、そういう観点から今日は確かな問題意識を持って取り組みたいと思っています。
それでは、みなさん一緒に旅と学びの話を聞きましょう!
協議会が考える
「旅と学び」とは?
まず本協議会の設立背景ですが、「知識習得型」の教育から21世紀型スキル「未来を切り開く力」を身につけていこう、ということから、日常(コンフォートゾーン)から飛び出して、アンコンフォートゾーンで21世紀型スキルを身につける経験が大切で、それには「旅」が最適なのではないかと考えています。
そこで、旅と学びに関する仮説検証を行って、これまで行われてこなかった検証に挑戦しようということになり、今3期の活動をしております。
我々がどのように旅を捉えるか、学びを捉えるかというのは、我々なりに考えていかなければならないということで、ディスカッションをスタートしています。これは最終版ではないもので、これからどんどんアップデートしていくものです。
この体系化に取り組むプロジェクトも立ち上がりましたので、ご関心のある方はぜひ一緒に活動できればと思います。
学びとしては、協議会が考えているものはこのようなものがあります。
・21世紀型スキル、ジェネリックスキル
・Well-being
・学びのプロセス(経験学習理論)
・五感で楽しむ、自分のものさし、価値観の変容
4期以降は、「五感で楽しむ」ということにも注力していきたいと考えています。
皆様こんにちは。よろしくお願いいたします。電通の安孫子と申します。
今年の2月に実施させて頂いたプロジェクトのご報告をさせて頂きます。
昨年は2021年9月に、まだコロナ禍ということもあって、リモートでしか実施出来なかったんですけれども、今年はなんとかAPUの留学生に東京に来て頂いた上で、鎌倉学園さん、かえつ有明さんとリアルで実施することが出来ました。
今回プロジェクトを実施するにあたり、ご支援頂いた事務局や学校関係者の皆様に、まずありがとうございました、という所で私の方からご報告させて頂きます。
■前回プロジェクトの振り返り(2021年9月 リモート実施)
2021年9月は、各学校で実施されている授業の延長線のような事をAPUの留学生に参加頂きリモートで実施しました。
留学生から見た文化的に異なる部分の意見を聞き、かえつ有明さん・鎌倉学園さんの(生徒さん)気づきにして頂くという事をした次第です。
(2021年9月 アンケート結果)
■今年度の 異文化交流 旅からの「学び」を効果検証 Feb18 and 20
・DAY1では、APUの留学生2名(リベリア出身・ベトナム出身)に東京に来て頂き、ここ最近はコロナでなかなか海外に行くことも出来ず、海外への修学旅行も実施出来なかったという事から、世界に目を向ける機会が希薄しているという事を踏まえ、冒頭、様々な国から留学生を受け入れている学校という特色があるAPUさんならではの視点で、今の日本の状況を説明して頂くといった事もありました。
特に、日本は便利で安全で快適な国ですけれども、他の国は陸続きで他国と隣接していたりと、日本に住んでいては分からない事も多いので、そのような点も含めて、APUさんから最初にお話がありました。
日本は安全な国といいますけれども、実は世界から見ると「特殊」な国という言い方をAPUさんがされていたり、世界を知る為にはやはり、交流・対話が近道であるといったことも仰っていました。
向かって左側の写真ですが、数字が「6」か「9」か、正解はどちらでも良いのではというところで。
相手の事を、多様性を受け入れるという事が今後、世界と向き合っていくうえで大事だと思いますし、日本の当たり前が世界に通じるとは限らない、といったお話が非常に印象的であるなと感じました。
■留学生の出身国についてのご紹介
お2人の留学生からそれぞれの国について紹介して頂きました。
ベトナムご出身 グィン ゴク トゥイ ヴィさん
「ベトナムには何民族がいるか?」といったお話で、答えがどれかというよりもベトナムに50以上の民族がいることに驚きましたし、日本で生活していると「民族」という単語自体、馴染みがないので、生徒たちも新鮮な気持ちで聞いていたのではないかと思います。
リベリアご出身 ドルカス ケー メンディンさん
伝統的なダンスについてや、リベリアは意外とビーチリゾートであるといった話、アフリカの中で植民地になっていない国の1つであるということ、リベリアで現在問題になっている点についてお話いただきました。
■グループに分かれてディスカッション
テーマ:「日本を世界の人に知ってもらい、世界からビジターを増やすために私たちが出来ること。を考えよう!」
学生たちならではの視点があるなと改めて感じました。
■まとめ
事前に他校の生徒や留学生と交流をしたうえで、あるテーマに則ってディスカッションをすることで、色んな発見がありましたし、「旅」が加わるとさらに化学反応があるのではと感じました。
高校生、学生の発想は無限大だとすごく感じたので、そこを僕たちがしっかり拾っていく必要があるなと思いました。
僕も含めてですけれど、英語力は引き続き日本人が向上していかなければいけないですし、訪日客や関係者人口、ビジネスで日本に来ていただく場をしっかり作っていく必要があるのかなという所をこのプロジェクトで感じた次第です。
旅と学びの関係性解明にこのプロジェクトは寄与しているのではないかと思っております。以上でございます。ありがとうございました。
岩田氏:皆さんこんにちは。初めまして。丸善雄松堂株式会社の岩田千穂と申します。この度は、発表の機会をいただきありがとうございます。
昨年末から年始にかけて、研究部から「アカデミック・ツーリズム」プロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトは、合同会社ビーコンつしま、丸善雄松堂株式会社、ANAホールディングス株式会社事務局がプロジェクトメンバーとして活動しております。
私が所属する丸善雄松堂は、大学をはじめとする全国の教育・研究機関への学術資料の提供や学習空間・商空間のプロデュース、図書館など教育機関・文化施設の運営支援等の事業をおこなっております。地域や社会に広がる「まなびのつながり」を育み、人びとの持続的なまなびを促進する環境づくりを支援したいという想いで事業を展開しております。
本日はまず、アカデミック・ツーリズムプロジェクトとは何かご紹介させていただいた後、実証実験として行いました対馬でのモニターツアーの様子や検証結果の一部をご報告したうえで、今後の展望をお話させていただきます。
では、早速どんなプロジェクトなのかご紹介したいと思います。アカデミック・ツーリズムプロジェクトは、先ほども触れました通り、本協議会の研究部から立ち上がったプロジェクトです。
アカデミック・ツーリズムは、一般的には大学のゼミ旅行や大学が主催するフィールドワーク型ツアーなどを指すことがありますが、このプロジェクトでは「研究者や専門家の学術的な解説・ガイドを聞き、直接質問し、対話する機会のある旅行」としています。ここでの研究者や専門家は、大学や研究所、博物館をはじめとする社会教育施設等に所属しています。ここで、現在の旅行においてどれくらい社会教育施設が活用されているかを見てみますと、例えば
観光戦略実行推進会議の資料(文化庁, 2019)によると、訪日客の29%が美術館・博物館を訪問、26%が日本の歴史・伝統文化を体験(複数回答調査)。海外でも博物館等の文化資源は観光振興に極めて大きな役割を占めているといわれています。
しかしながら、国内旅行者はどうかと目を向けると、旅行中の訪問先として、社会教育施設(博物館、科学館、図書館、公民館、体育施設など)はあまり一般的ではないという現状があります。
公益財団法人日本交通公社(JTBF)が行った 旅行者意識調査(五木田ほか, 2020)によると、「新型コロナ収束後、旅行先で行いたい活動」として「歴史・文化的な名所の訪問」を選んだ人は全体の8%ですが、美術館や博物館を選んだ人はわずか0.9%にとどまります。
出典:
文化庁. (2019). 「観光戦略実行推進会議(第35回)参考資料1」. 首相官邸ホームページ. https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/kanko_kaigi_dai35/sankou1.pdf (参照:2023-03-24)
五木田ほか. (2020).「新型コロナウイルス感染症流行下の日本人旅行者の動向(その5)~JTBF旅行意識調査結果より~」. 公益財団法人日本交通公社. https://www.jtb.or.jp/wp-content/uploads/2020/08/covid-19-japanese-tourists-5_JTBF20200814.pdf(参照:2023-03-24)
■専門家や研究者の対極にある「初学者」に着目
今ご紹介したような、社会教育施設の旅行における利用率の低さは、そういった施設の利用に対する心理的ハードルが高いのではないか、という考えが研究部での議論内で出たことからも現実感があります。
そういった背景から、本プロジェクトでは、「専門家」や「研究者」の対極にある「初学者」に注目しました。アカデミックでディープなツアーに参加し、研究者や専門家の話を聞くことで、初学者の好奇心や学びにポジティブな影響があるのではないか、と仮説を立てました。一方で、受け入れ側となる専門家は、普段交流する機会の少ない初学者の興味・関心を知ることで、専門家同士の会話だけでなく、自身の専門知識をより広く伝える方法を考えることができるのではないかと考えました。
このように、参加者・受け入れ側双方に相乗効果があるという仮説を立て、本プロジェクトの目的を、大きく2つ設定しました。ひとつは、アカデミックなプログラムやツアーの提供により初学者の好奇心を高め、学びを深め、結果的に同地域の再訪につなげること、もうひとつは、受け入れ側となる専門家がプログラムやツアーを通して初学者の興味・関心を認識し、地域の再発見につなげ、題材の検討や伝え方に活かすことです。
上記の仮説を検証するために、実際にアカデミックでディープなツアーを対馬で企画し、参加者と受け入れ側双方へアンケートやヒアリング調査を実施いたしました。
写真をご覧いただいただけでもお分かりになるように、かなり盛りだくさんな旅程を終えたあと、全12名の参加者にアンケートに答えていただきました。
今後の旅行の際の選択肢として、他の地域でアカデミック・ツーリズムを利用したいかという質問に対しては、利用したいと強く思っている方が6名、残りのほとんどの方もどちらかといえば利用したいと思った方が多かったです。
■ 最後には対馬クイズを実施!
最後に、ツアーの中でお話がでた事柄がどれくらい印象・記憶に残っているかを確認するために、対馬クイズを出してみました。これは、検証方法としては新しい試みでしたが、ツアーのなかで専門家やガイドから聞いたお話を中心に4問出題し、正解率75パーセントでした。
これを高いと見るか、低いと見るかは要検討ですが、少なくとも、ツアーに参加しなければ答えられない質問ばかりでした。
以上が、ツアー参加者へのアンケートから見えたことのご紹介でした。
■受入側の反応は?
続いて、ツアーで参加者へ専門的な知見からお話しいただいた方々へのヒアリング結果から、プロジェクトが仮説として考えておりました「受け入れ側(専門家)は、普段交流する機会の少ない初学者の興味・関心を知ることで、地域の再発見や、自身の専門知識をより広く伝える方法を身に着けることができる。」にかかわる部分をご紹介いたします。
■受入側ヒアリング結果
受入側の方々へのヒアリング結果をまとめますと、各施設とも扱っているテーマに興味を持つ人を増やしたいというニーズがあり、それに対して今回の参加者は皆説明を熱心に聞いてくれたので、意義が見いだせるというポジティブな反応をいただけたと言えます。今回のツアーに関しては、事前に協議会の趣旨をご説明しておりますので、好奇心が強い方がいらっしゃったという認識もあったかと思います。
一方で、課題として見えてきたことは、同様のツアーの評価方法や継続性、マンパワー不足の問題でした。これらを克服するためのアイディアとして、観光ガイドなどを担う地域住民へレクチャーすることで説明する人を増やすことがあり、各施設前向きにとらえています。初学者に近い目線で話せる人を増やし、施設の活動にかかわる市民(地域住民)を増やす効果も期待できます。
■今後の展望
アカデミック・ツーリズムプロジェクトのご紹介、モニターツアーの様子と検証結果の一部のご紹介をさせていただきました。まだ立ち上がって数か月のチームですので、今後は引き続き検証を続けていきたいと考えております。
また分析や研究のためにはサンプル数も増やしていきたいと思っております。新しいプログラムやツアーを組んで、参加者の数を増やして行けたらと考えております。以上で私からの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
上甲氏:こんにちは。日本アイ・ビー・エム株式会社の上甲と申します。よろしくお願いいたします。
私から研究部の活動と、その成果の一つであるプロジェクトのご紹介をさせていただきます。
■研究部の活動
研究部の活動としては、これまでこのシンポジウムでもお話していたように、旅と学びを科学するというところをやっております。
「旅」と言っても色々あるし「学び」にも色々ある中で、研究部では、各自が関心のあるテーマを持ち寄って議論を行い、同じ関心を持つメンバーでプロジェクトを立ち上げるような形で活動しております。
テーマの例としては、「サイクルツーリズム」や「アカデミックツーリズム」をはじめ、もう少し抽象的なテーマですと、「同じ場所に繰り返し行く意義って何だろう?」ですとか、「計画を敢えて立てない意義って何だろう?」「旅と学びを体系化しよう!」など、具体的なものから抽象的なテーマのものまで、各自の興味のままに活動をしております。
本日は「短期海外留学プログラムにおけるグループでの学び、人と人との繋がりと学び」というテーマで、APUさんと一緒にプロジェクトを進めましたのでご紹介します。
APUの筒井先生、チョン先生、カッティング先生という方々と一緒に進めておりました。
■分析結果
では、着目すべきキーワードは何を選んだかと言いますと、グループの学びに着目して「任せる」という言葉を抽出しました。
「任せる」という言葉がレポートの中で具体的にどのように使用されているかというと、
現地の人(韓国人)とのコミュニケーションを、グループの中で韓国語ができるメンバーに「任せる」という使われ方が多く出てきました。
では、その「任せた」経験がどのような学びに繋がったかと言いますと、グループで協力して取り組むことの大切さが分かったという感じで、プログラム終了後の内省・振り返りを通じて、自分なりの学びを得たという事です。
学び方も色々で、旅の中でも振り返りがあるので、旅の最中に気づくといった事もありました。
(レポートの例② 青字下線部分)
【気づき】
↓
【学び】
<参考>
参考までに、「任せる」というキーワードは結構重要で、教育分野では'フリーライダー'という課題があるのですが、今回レポートの中からキーワードとして「任せる」という課題を象徴するような言葉が浮かび上がってきたのは結構興味深いことだなと思います。
教育的仕掛けと学びの関係性なのですが、
先程のレポートに戻って、「現地の人との交流を任せきりにしてしまった」という文章の前部分を更によく読んでみると、
これら(青字下線部分)は、具体的な経験の振り返りを通じた学びであり、教育的仕掛けによって生まれた学びなのではないかなと思います。
今回は、短期海外留学プログラムを例に分析を進めました。今後も、こういった形で、旅と学びの関係性を丁寧に紐解いていくことで、どんどん新しい気づきを見出していければと思います。
ありがとうございました。